私は蜘蛛が大嫌いです。 - 怖い話 実話【短編・長編・都市伝説・超怖い話・怪談】まとめブログ

私は蜘蛛が大嫌いです。

私は蜘蛛が大嫌いです。

それこそ洒落にならない程の恐怖を感じます。

何故でしょうか。

これは、小学校に上がる前の話です。

IMG_2346s.jpg


兵庫県のSというところにある

マンションに住んでいました。

マンションは敷地内に3棟あったと思います。

私のうちはそのうちの1棟の8階の

一番奥にある部屋です。

8階には私と同い年の男の子が私を含め3人いて、

皆仲が良く、いつもマンション内の公園や

敷地内の色々な場所で遊んでいました。

場所によってはガガンボや蜘蛛が沢山いて、

気味が悪い。

マンションの背後には大きな山が

聳えているせいか、

虫がやたらと多いマンションでした。

さて、仲良し3人組みとは別に、

たまに一緒に遊ぶT君という男の子がいました。

T君はマンションの1階に住んでいて、

少し内気な感じの子です。

外に出て遊び回るより、家の中で

おもちゃで遊ぶのが好きだったようで、

外遊びが好きな私達とは1ヶ月に数度遊ぶ

程度の仲だったと思います。

ある時、私一人でT君のうちに

遊びに行きました。

マンションの一階は少し薄暗いのです。

さらにその日は曇りだったので

廊下が夜のように暗く、

T君のうちに入るまでかなり心細かったのを

憶えています。

T君のうちに着くと、T君とT君のお母さんが

出迎えてくれ、ホッとしました。

T君は救急車やパトカーの

ミニカーを取り出してきたので

子供なりにストーリーを仕立てて

2人で遊んでいました。

しばらく遊んでいて、ふと視線を上げると、

T君の部屋の箪笥の上に見慣れない

おもちゃが置いてあることに気が付きました。

下から見上げる限りでは、レールが

立体的に交差した造形しか

判別出来ませんが、

いかにも面白そうなおもちゃです。

「あのおもちゃで遊ぼうよ」と、

T君に頼みました。

するとT君は素っ気無く、

「壊れてるから遊べないよ、○○君が

壊したんじゃないか」

と言います(○○君とは私のこと)。

吃驚して、

「嘘だあ。あんなおもちゃ見たことないよ」

と言い返すと、

「この前遊びに来た時壊したじゃないか」

と言い張るのです。全く記憶にない事です。

ちょうどその時T君のお母さんが

部屋に入ってきて、

箪笥に洗濯した服を仕舞い始めました。

「T君が、僕があのおもちゃを

壊したっていうんだよ」

と、T君のお母さんに訴えました。

「だって○○君、この前遊びに

来た時壊したでしょう」

と、T君のお母さん。

当時4歳か5歳だったと思いますが、

私は3歳位からの記憶がわりと

ハッキリと残っています。

既に物心ついていましたので、

友達のおもちゃを壊したか

どうかくらいは判断出来ます。

断じてそんな記憶はありませんし、

そもそもそのおもちゃを見るのは

初めてなわけです。

「どうしてそんな事言うの?

ぼくは壊してないよ!」

「この前遊んでて壊したじゃないか」

「そうよねえ、○○君が壊したから

遊べなくなったのよね」

その時は勿論この言葉を

知りませんでしたが、

そう、生まれて初めて「不条理」を

感じた瞬間だったと思います。

しばらく必死に記憶を辿って、

以前にT君のうちに遊びに来た時の

事を思い出そうとしてみましたが、

やはり何も憶えていませんでした。

その場にいたたまれなくなり、

自分のうちに帰りました。

私にとってはかなりショックな出来事で、

帰宅しても親に話せません。

その後間もなく、私達一家は東京へと

引越ししてしまったので、

T君のおもちゃのことは不可解な

ままになってしまいました。

その後、私は叔母から誕生日の贈り物に

幼年向けの「ファーブル昆虫記」をもらい、

大変に気に入って何度も何度も読み

返していたので、虫がとても

好きになりました。

引っ越した先は東京にしては

自然が多い地区でした

ので、外に出ては色んな虫を

捕まえて遊んでいました。

ただ、どうしても蜘蛛だけは好きになれません。

好きになれないどころではない、

蜘蛛の事を考えるだけで身の毛が

よだつ思いがします。

ファーブル昆虫記にも蜘蛛の話は

載っていて、お話としては非常に

面白いのですが。

小学校、中学校、高校と、いつまで

たっても私の蜘蛛嫌いは直りませんでした。

ある日、幼い頃育ったマンションでの

日々について、

母親と思い出話を語ることがありました。

色々懐かしく思い出しながら話しているうちに、

「お前は今でも蜘蛛が大嫌いだけど、

子供の頃は本当に酷かった。

夜中にいきなり『蜘蛛は嫌だーっ!』

って叫び始めるんだよ。」

先に書いた通り、私は自分ではわりと

小さい頃の記憶がある方だと思っている。

でも、夜中に泣き出したという

記憶は全然ないわけです。

母親が語るには、私の泣き叫ぶ

様があまりにも真に迫っていて、

まるでそこに本当に蜘蛛がいるかのように

怯えていたそうです。

寝ぼけたという様な生易しいものではなく、

錯乱状態といってもよいぐらいで、

気でも違った様に見えた。

そんなことが何度も続くので、

病院に連れて行った方が良いのでは、

と悩んだほどだそうなのです。

そこで少し、自分の記憶が

あやふやになってきました。

いくらなんでも、そんなことがあったら

憶えているんじゃないか?

でも全く憶えていない。

ハッとしました。

こういうことは前にもあったなあ。

そうだ、T君のおもちゃのことだ。

そこで何か思い出しそうになり、

T君の薄暗い部屋のイメージが頭の中に

フラッシュバックしてきました。

でも、はっきりと思い出す前に記憶の糸が

フッと途切れてしまい、それ以上は

思い出せません。

その時母親が、

「あのマンションは裏手が山だったから、

大きな蜘蛛がたまに出たんだよねえ。

大人の手くらいあるやつ。あんな大きな

蜘蛛、子供が見たらすごい大きさに

見えるだろうねえ」

と言いました。

その瞬間、私の頭の中に幾つかの

イメージが同時に駆け巡り、

気が付くと私は頭を抱えてウゥと唸っていました。

すんでのところで叫び声を抑えていました。

T君の部屋で走り回っている時に転んで、

あのレールのおもちゃの上に倒れこむ瞬間

床を叩きながら泣いて私を非難するT君

T君に、どうすれば○○君を許す?

と聞くT君のおかあさん

T君のおかあさんが、彼女の手より

大きな蜘蛛をつかんで

僕の口に

感触が!

私の母親は驚いたことでしょう。

私は逃げるように自分の部屋まで走り、

そのまま布団をかぶって頭の中に蘇ってくる

イメージを消そうと、もがきました。

その日は朝まで眠れずに記憶と葛藤し、

その後数週間は日常生活の合間に

蘇ってくる記憶に苛まれ続けました。

なにしろ人と会っていても、いきなり頭を

抱えてうめき始めるわけです。

頭がおかしくなったと思った

人もいたでしょう。

「蜘蛛を食べれば、許す」

「じゃあ、蜘蛛とってくるね」

冗談かと思いきや、数分も経たぬうち

戻ってくるT君のおかあさん

「廊下に巣を張ってる蜘蛛を取ろうと

思ってたんだけど、

すごい大きな蜘蛛がいたから

そっちの方を取って来た」

「うわっ、でっかー!」

「ほーら○○君、食べなさい」

今では分かる。

T君の母親は、本気で蜘蛛を

食べさせようとしたわけじゃない。

でも、彼女の目は、

加虐の喜びに満ちていた。

彼女はひとしきり大きな蜘蛛を私の

口のまわりになすりつけると、

ひょいと窓から蜘蛛を捨て、

「おかあさんにいっちゃだめよ!」

と恐ろしい顔をして言った。

そしてT君にも、

「これで○○君を許して上げなさい!」

と叱りつけた。

これが私の、蜘蛛を嫌いになった理由です。


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